役員の報酬はどのようにして決めるか
当社は、社長のワンマン経営で、役員報酬についても社長の一存で決めることが多いのですが、本来はどのように決めることになっているのでしょうか。
スポンサーリンク
取締役は、株式会社との間に特約がなければ、報酬をうけられません。取締役の報酬の額は、定款で定めるか、株主総会の決議で定めなければなりません。
監査役も、株式会社との間に特約がなければ、報酬をうけられません。監査役の報酬の額は、定款で定めるか、株主総会の決議で定めなければなりません。そして、監査役の報酬は、いずれの場合でも取締役の報酬とは切り離して定めなければなりません。
取締役または監査役がその職務執行の対価として会社から支給される金銭その他給付を取締役報酬または監査役報酬といいます。
会社と取締役、監査役との関係は委任または準委任の関係であり、無償を原則としていることから、取締役、監査役は、会社との間で報酬の特約をしないかぎり、報酬請求権をもたないことになります。通常は、会社と取締役、監査役との任用契約において、報酬支払の特約がなされています。
取締役の報酬額の決定は、本来株式会社の業務執行権者である取締役会または代表取締役が決定すべき事項ですが、お手盛防止のため、定款で定めるか、株主総会の決議によって定めなければなりません。定款により定めた場合、インフレに対応するため定款変更手続をしなければならず面倒なため、実務上は、株主総会の決議により、報酬の総額の最高限度を定め、各取締役の配分は取締役会に委任しているのが通例です。さらに取締役会においてその配分決定を常務会または代表取締役に再委任する場合もあります。
株主総会の決議方法としては、次のものがあります。
1. 個人ごとに各別に定める方法
2. 役職ごとに各別に定める方法
役職が任期中に変われば、報酬の減額もありえます。
3. 報酬の総額を定める方法
4. 最高限度額を定める方法
多くは月額で定めているようですが、年額とか一営業年度として定める例もあります。
5. あらかじめ定められた報酬規定によって支給する旨定める方法
報酬規定があっても、これを無視して報酬額を決定することもできます。
6. 取締役会への無条件白紙委任決議
取締役会への無条件の白紙委任決議は、無効であると解されています。退職慰労金の例ですが、会社の業績、退職役員の勤続年数、担当業務、功績の軽重などから割り出した一定の基準によって、退職慰労金の額を決定する内規や慣例があり、総会の右決議がその内規や慣例によって定まっている一定の支給基準によって支給すべきことを黙示的に決議したものと認められる場合は、商法269条の趣旨に反しないとした判例があります。
取締役会は、株主総会の決議により、委任をうけた範囲内で(3.は報酬総額の範囲内で、4.は最高限度の範囲内で)、具体的な金額、支払時期、支払方法を決定します。株主総会の決議が取締役会に委任する旨明示していない場合でも、具体的な報酬額などが定まらないかぎり、業務執行の一環として取締役会がこれを定めなければなりません。
取締役会においてその配分決定を常務会または代表取締役に委任する場合もあります。しかし、株主総会の決議で、取締役会をとびこえて各取締役の報酬額の決定を常務会または代表取締役に委任することは、取締役会の監督機能を弱体化するものとして許されないと解されます。
監査役の報酬は、定款で定めるか、株主総会の決議によって定めなければなりません。ここで注意しなければならないのは、昭和56年の商法改正によって、従来の慣行のように取締役の報酬と監査役の報酬を一括して決定することは許されず、かならず両者を区分して決定しなければならないということです。これは、取締役会または代表取締役の影響を排除し、監査の実を上げようとする趣旨によるものです。なお、監査役が2名以上おかれ定款または株主総会で、監査役の報酬を一括取り決めたときは、各監査役の各自の報酬額は監査役の協議によって決定されます。
copyrght(c).会社役員の法務.all; rights; reserved