取締役の選任方法
当社の社長は、後継者としてそろそろ息子を取締役にしたいと考えていますが、取締役はどのような手続で選任すればよいのでしょうか。
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取締役は株主総会で選任されます。したがって、社長の息子を取締役にしたいときは、株主総会に議題として上程し多数決によって選任されることが必要です。
株式会社では、「所有と経営の分離」と言って、出資者である株主は会社の経営に直接タッチしないで、取締役に会社の経営を任せることになっています。誰が取締役になるかはその会社にとって命運を決するほど重要な意味を持ちますから、取締役を誰にするのかを決めるのは、出資者すなわち会社の所有者である株主です。そして、株主の意思を決定する場が株主総会なのです。では、取締役選任の具体的手続を説明しましょう。
取締役を新たに選任するためには、まず株主総会が招集され、株主総会が開催されることが必要です。取締役を選任する株主総会は、定時総会、臨時総会どちらかを問いません。株主総会の招集は、原則として取締役会が決定し、会日(総会の日)より2週間前に、会議の目的たる事項を記載した書面をもって通知しなければなりません。
次に、取締役の選任の決議をするための定足数を充たしていることが必要です。株主総会の通常の決議は、発行済株式総数の過半数に当たる株式を有している株主が出席し、出席株主の議決権(株式数)の過半数による議決によって行われますが、会社は、定款でこの定足数を変更したり(例えば4分の1とする)または排除すること、すなわち定足数を要しないとすること、ができます。実際上、多くの会社は定足数の定めを置くと株主の出席が足らず株主総会の成立そのものが困難になってしまう場合があるため、定款で定足数を排除して定足数をまったく要しないとしています。しかし、取締役の選任決議については、定款をもってしても、定足数を発行済株式総数の3分の1未満に下すことはできません。これは、会社の経営者たる取締役の地位の重要性に鑑み、あまりに少数の株主によって取締役の選任がなされてしまうことは好ましくないという考えにもとづくものです。
したがって、会社が定款で、株主総会の定足数を発行済株式総数の3分の1未満に定めたり、または定足数を排除している場合でも、取締役の選任決議をするについては、発行済株式総数の3分の1以上の株主が出席しているという定足数を充たすことを要します。
選任の決議は、出席株主の議決権(株式数)の過半数によってなされます。ですから、株式会社では、通常、発行済株式の多数を有している株主の意向によって、取締役の選任が左右されると言えます。もっとも、少数派の株主の意見を取締役の選任について反映するための制度として、累積投票制度というものがあります。この制度を採用すれば、1つの総会で複数の取締役を選任するとき、株主は1株について被選任取締役の数と同じ数の議決権をもつことになります。そして、この議決権をある1人の取締役に集中して投票させることができ、その結果、少数派株主が、自分たちの意向に添う取締役を選出することが可能になるわけです。
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