役員退職給与と使用人に支給する退職金との取扱いの差異

 役員に対して支給する退職金は、使用人に対して支給する退職金と税務上の取扱いがどのように異なるのでしょうか。

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 使用人に対して退職金を支給する場合には、全額損金に算入することができます。しかし、役員に対して退職金を支給する場合には、会社の経理において損金経理をしなかった場合、及び損金経理をした場合でも不相当に高額な部分については損金算入が認められません。
 内国法人が退職した役員に対して、役員退職給与を支給した場合に、その金額が損金に算入されるためには、まずその法人において損金経理をすることが前提となっています(法法36条)。
 これは、役員退職給与が次の2つの性格を有しているからと考えられます。
 1. 役員の当該法人在職期間中の職務執行に対する対価であり、報酬の後払いとしての性格
 2. 役員の当該法人在職期間中の利益獲得に対する貢献に報いるための利益の分配としての性格
 上記1.と2.との差異は、1.の退職給与が損金性を有するのに対して、2.の退職給与が利益処分としての性格から損金性を有しないことです。
 したがって、法人が役員退職給与を1.の退職給与として支給する場合には、その法人が損金経理をすることによりその退職給与の性格を明らかにするよう求められているわけです。
 法人税法では、内国法人が退職した役員に対して支給した退職給与について損金経理した場合であっても、不相当に高額な部分の金額(以下、過大役員退職給与)は、損金に算入することを認めていません(法法36条)。
 その理由として過去の判例は、以下のように述べています。
 1. 役員に対する退職金が従業員に対する退職金と異なり、益金処分たる性質を含んでおり、一般に相当と認められる金額を超える部分は利益処分として損金算入を認めない。
 2. 退職給与金額には多分に益金処分としての性格を有する支出の含まれる事例が少なくなく、一般に相当と認められる金額に限り、収益を得るために必要な経費として損金算入を認め、上金額を超える部分は益金処分として損金算入を認めない。
 すなわち、法人が役員退職金を支出する際に損金経理をしても、その金額の中に利益の分配としての性格の退職金が含まれている場合には、その金額を過大役員退職給与として損金に算入しないこととしているのです。
 内国法人が各事業年度においてその退職した役員に対して支給した退職給与の額が、以下の条件から算定した「その退職した役員に対する退職給与として相当であると認められる金額」を超える場合のその超える金額をいいます(法令72)。
 1. 当該役員のその内国法人の業務に従事した期間
 2. その退職の事情
 3. その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する退職給与の支給状況
 4. その他
 退職した役員とは、会社との委任関係が終了した役員すなわち、実質的に会社から離脱した役員を意味します。ただし、以下のケースも退職した役員に含まれます(法基通9-2-23)。
 すなわち、法人が役員の分掌変更又は改選による再任等に際し、その役員に支給した給与で、次のような事実がある場合には、実質的に退職したと同様の事情があるものとみなします。
 1. 常勤役員が非常勤役員となったこと。
 ただし、常時勤務していないものであっても代表権を有する者及び代表権は有しないが実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者を除きます。
 2. 取締役が監査役になったこと。
 ただし、監査役でありながら実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者及びその法人の株主等で法人税法施行令71条1項4号(使用人兼務役員とされない役員)に掲げる要件のすべてを満たしている者を除きます。
 3. 分掌変更等の後の報酬が激減(おおむね50%以上の減少)したこと。
 法人税法36条では、不相当に高額な部分の金額について損金の額に算入しない旨のみを規定しており、それが否認される場合に「役員退職金」「役員賞与」のどちらで否認されるのか明確となっていません。この帰属は、所得税法において以下のような差異が出てきます。
(1)役員退職金の場合
 退職所得に該当し、源泉徴収があります。この源泉徴収は、退職所得の受給に関する申告書の提出がある場合には、退職手当等の金額から退職所得控除額を控除した金額の1/2相当額を基礎に行われます。
(2)役員賞与の場合
 給与所得に該当し、源泉徴収があります。法人では通常役員退職金として損金経理し、源泉徴収税額も上記(1)により徴収していますから、役員賞与と認定された場合には、源泉徴収税額に未納部分が発生する場合が考えられます。
 所得税法30条で「退職所得とは、退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与及びこれらの性質を有する給与に係る所得をいう。」と規定していますので、基本的な帰属は退職所得と考えられます。ただし、所得税基本通達30-1 で「退職手当等とは、本来退職しなかったとしたならば支払われなかったもので、退職したことに基因して一時に支払われることとなった給与をいう。したがって、退職に際し又は退職後に使用者等から支払われる給与で、その支払金額の計算基準等からみて、他の引き続き勤務している者に支払われる賞与等と同性質であるものは、退職手当等に該当しないことに留意する。」としています。
 したがって、本来賞与として支給すべきであった金額を退職給与に含めて支給しているような場合には、役員賞与と認定されると考えられます。

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