交際費と福利厚生費の区分
会社が支出する費用のうち、交際費と福利厚生費の区分はどうすればよいのでしょうか。
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福利厚生費は、専ら従業員の福利厚生などのために支出する費用をいいますが、福利厚生のためであっても、特定の社員のみを対象とするものや、高額なパーティ等不相当に高額なものは、福利厚生費とならず、交際費または給与として取り扱われます。
税法上、交際費等とは交際費、接待費、機密費その他の費用で、会社がその得意先、仕入先その他事業に関係ある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものをいいます。
交際費の支出の相手方には、自社の従業員も含まれているため、従業員に対する慰安やレクリエーションの費用も原則として交際費かまたは給与になります。
しかし、租税特別措置法61条の4第3項で、専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用は、交際費から除くことになっています。
福利厚生費とは、役員または従業員の福利厚生のために支出する費用をいい、その支出形態は、法定福利費、厚生費、レクリエーション等の行事費、厚生施設負担額および現物給与などがありますが、これらの費用は、当然に会社の経費として損金算入が認められています。
ところで、社内の行事に際して支出する金額等で次のようなものは福利厚生費の性質を有するものとされ、交際費等ではないと租税特別措置法(法人税関係)通達で明らかにされています。
1. 創立記念日、国民の祝日、新社屋の落成沢等に際して従業員におおむね一律に社内において供与する通常の飲食の費用
2. 従業員またはその親族等の慶弔、禍福に際し一定の基準に従って支給される金品の費用
上記の取扱いからも明らかのように、従業員に対する接待、供応、慰安、贈答の行為のために支出する費用は、一般的には、給与または福利厚生費のいずれかになるのですが、交際費の支出の相手先に自社の従業員も含まれることから、従業員に対する交際費も存在します。
そこで、従業員に対する接特等が福利厚生費か交際費かの区分は、専ら従業員のためにか、また、支出する金額、通常要する費用が一定の基準によったものかどうかで判断します。
専ら従業員のためにから、例えば、一定以上の役職者だけを対象とした旅行や記念式典のパーティー、忘年会等は福利厚生費とならず、幹部だけの親睦、慰安を目的としたものとして交際費(役員だけを対象とした場合には、その役員の給与(賞与))となります。
次に、通常要する費用の範囲ですが、一義的に定められるものではありませんので、個々の行事の性格、内容、参加人員、開催場所等を総合勘案して常識的に判断します。例えば、専ら従業員の慰安のために行われる運動会等の費用でも、その行為のために通常要する費用でないものは交際費となります。また、全従業員を対象とした忘年会であっても、料亭で豪華に遊興する費用も、やはり、通常の範囲をこえ、全額交際費となります。
さらに、従業員の慶弔、禍福に際して支出する金品で、一定の基準によるものも福利厚生費となります。この場合、一定の基準とは、会社が定めている内規等の規程に従うことが必要ですが、その規程どおり支出したとしても、社会通念上相当と認められる金額をこえる場合には、福利厚生費ではなく、交際費または給与等となります。なお、規程が常識的な範囲内のものであっても、事情によっては、格差をつけることも認められます。
このように、福利厚生費と交際費の区分は、前者は、全従業員を対象とするもの、普遍的なものをいい、後者は、特定者を対象とするものということができます。また、福利厚生費と給与との区分も上記と同じように普遍的なものか、特定者を対象とするものかで区分しますが、いずれにしても、両者の区分はデリケートなものが多いといわざるをえません。
福利厚生目的であっても、通常要する費用をこえるものは社内交際費となります。会議費として認められる1人あたりおおむね3000円以内におさえるように努めてください。
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