執行役員とは

 最近、執行役員という言葉をよく耳にしますが、これはどのような役員なのでしょうか。また、執行役員制度を導入する場合、どのような注意が必要でしょうか。

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 執行役員とは、取締役会によって選任され、代表取締役の指揮に従って、会社の業務執行を分担して行う幹部です。執行役員制度は、我国では導入されはじめたばかりのいわば未成熟の制度ですから、会社への導入にあたっては、取締役等の法定の制度との関係に注意する必要があります。
 会社役員とは、通常、商法等に規定されている取締役や監査役などを意味します。
 これに対して、最近わが国の企業でもとり入れられるようになり、新聞紙上などで注目されている「執行役員」の「役員」は、取締役等の法律に規定されている会社幹部を意味するものではありません。
 執行役員は、アメリカの会社制度におけるオフィサー(Officer)の訳語であり、日本の代表的企業で、平成10年になってこの名称の役職を設けるところが次々に現れたため、にわかに注目を集めるようになりました。この制度を導入した会社によって、執行役員の意味するところや、担わされる役割に違いがありますが、現時点でのいちおうの定義としては、「執行役員とは、取締役会によって選任され、代表取締役の指揮に従って会社の業務執行を分担して行う幹部である。」といえます(今後この制度の普及と成熟の過程で、現時点での定義とは異なってくることも十分考えられます。)。
 最近、わが国の企業が執行役員制度を導入した目的としては、次のようなことが挙げられます。
(1)取締役のリストラ
 わが国においては、取締役は会社従業員の昇進、処遇の最終・最高段階として位置づけられ、規模の大きい会社では従業員出身の取締役の員数が増加する傾向があり、会社の業務執行の意思決定機関として十分機能しないような状態にあるところが少なくありません。これをスリム化する方策として、意思決定よりは業務執行を専ら行っている取締役(例えば使用人兼務取締役、)を「執行役員」として、商法上の取締役から外すのがねらいです。取締役の員数を減らすことは、いうまでもなくリストラに資することです。
(2)取締役会の権限の純化、強化
 (1)の目的とも関連しますが、わが国の会社においては、従業員から技擢された社内取締役が、使用人兼務取締役として代表取締役の指揮命令に服して業務執行を分担するのが普通です。代表取締役の指揮命令に服する取締役には、取締役会の本来の任務である会社の意思決定への関与も、代表取締役等の職務執行の監視・監督も、現実的にはあまり期待できないことは明らかです。そこで、代表取締役の指揮の下に業務執行を担当する幹部を「執行役員」として取締役から分離することにより、取締役及び取締役会の本来の機能である意思決定・監視監督機能を純化、強化するねらいがある、といえます。
 執行役員の法律的地位
 (1)会社との契約関係
 現在、わが国で導入されている執行役員制度では、取締役が執行役員を兼務する例があります。執行役員を兼務する取締役の法的地位は、これまでも多くの会社にみられた使用人兼務取締役とほぼ同じであるといえます。
 新しい制度として注目されている執行役員制度の真に新しい点とは、取締役でない人を執行役員とすることです。このような、取締役でない執行役員は、商法上は使用人として位置づけられ、したがって会社との契約関係は委任契約ではなく、通常、雇用契約と考えられます。
 (2)選任、解任
 執行役員は、これまで説明して来ましたように、取締役、監査役といった法定の役員とは異なる、いねば会社の自主的な制度ですから、その選任、解任は株主総会による必要はありません。執行役員は、いうなれば使用人中最高位の地位ですから、支配人その他重要なる使用人に該当するものであり、その選任、解任は商法の規定により取締役会の決議事項となります。
 (3)登記
 取締役の選任等は登記事項ですが、執行役員に関する登記は、現行法上ありません。
 (4)取締役に関するその他の規定の準用の有無
 現在主に議論になっているのは、取締役でない執行役員が株主代表訴訟の対象になるかどうかという点です。この点については、わが国の裁判例では、取締役以外の者に取締役に関する規定の準用を認めるのは、取締役ではないが実質的は会社の最高意思決定者であると判断されるようなケースに限定されています。したがって、取締役でない執行役員に、株主代表訴訟等の取締役に関する規定が準用される可能性はほとんどないといえます。
 執行役員制度は、社内の自主的制度ですから、これを導入するについては、導入の目的を明確にし、社内規則を整備することが最低限必要です。特に、従来から存在する使用人兼務取締役などの取締役との、職務上・処遇上の異同や関係をはっきりさせないと、単に新たな名称の地位を設けただけということになってしまうおそれがあります。

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