取締役の肩書の付け方
ほとんどの会社で、会長、社長、副社長、専務取締役、常務取締役などの肩書を採用しているようですが、この肩書のつけかたに何か決まりはあるのでしょうか。
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会長、社長、副社長、専務、常務などの肩書は、いずれも会社の取締役に与えられる肩書ですが、商法上きめられているものではなく、各会社が定款で任意に定めて採用する肩書です。したがって、それぞれの地位や職務権限は、定款の定める内容によってきまります。一般的には、会長が一番地位が高く、社長、副社長、専務取締役、常務取締役の順に地位が下がるものとされています。
わが国の株式会社においては、商法上、取締役は、代表取締役と取締役の区別しかありません。しかし、多くの会社で定款の規定により、会長、副会長、社長、副社長、専務(取締役)、常務(取締役)などの肩書を採用し、肩書のない取締役(これを「平取締役」と呼びます。)と区別しています。銀行などでは、「社長」とか「副社長」ではなく、頭取、副頭取などの肩書を採用しているのが普通です。このような、肩書のついた取締役を普通「役付取締役」と呼び、平取締役よりは地位が高いものとされています。
これらの肩書は、定款の定めによって任意に置かれるものですから、肩書(役付取締役)を採用するかしないか、どのような種類の肩書を採用するか、あるいは各肩書の会社内での地位や職務の配分をどう定めるか、は会社の自由です。
商業登記上は取締役と代表取締役のみが登記事項であり、定款の定めによる任意の肩書は登記事項ではありません。
取締役の肩書としてどのようなものを定めるか否かは会社の自由ですが、わが国において一般的には、地位の高いほうから順に下記のような肩書が使われています。
銀行以外の会社
会長
社長
副社長
専務取締役
常務取締役
銀行の場合
会長
頭取
副頭取
専務取締役
常務取締役
この他に、副会長(取締役副会長)という肩書などもあります。
取締役および代表取締役の権限はそれぞれ商法に定められています。
肩書のついた取締役、すなわち役付取締役は代表権限をもつ取締役(代表取締役)であるのが普通です。もっとも常務取締役については、代表権がない場合も少なくないようですが、商法では「常務」という肩書も代表権を有するものと認めるべき肩書として扱っています。会社の内規上、代表権がない常務取締役が行った行為でも、代表権がないことを知らなかった第三者との関係では、代表取締役が行ったのと同様の効果が会社に発生することになっています。
それぞれの肩書について、代表権をもたせるかどうかや、どのような業務を配分するかは、各会社の定款や職務権限規定などの内規によってきめられますが、普通は次のような場合が多いといえます。
会長・・・代表取締役であり、業界活動などの渉外的な業務を担当する。
社長(頭取)・・・例外なく代表取締役であり、取締役会の決議の執行すなわち会社の対外的、対内的業務の統括者である。
副社長(副頭取)・・・代表取締役であり、社長や頭取を補佐し、社長などに事故あるときは職務を代行する。
専務取締役・・・会社の業務全般について社長や副社長を補佐し、これらの者に事故あるときは代行する。代表取締役であるのが普通。
常務取締役・・・営業や経理などの特定の業務を担当することが多い。代表権が与えられていない場合もある。
取締役に対して社長などの肩書を付けるかどうか、それぞれの肩書にどのような地位や職務を与えるかは各会社が自由にきめることができるとはいっても、あまり一般的でない肩書を採用したり、あるいは各肩書に通常ともなうと考えられる権限を与えなかったりすることは、取引において混乱と紛争の原因となることなので、避けるべきです。また、会社の対外的業務執行においては、代表権限の有無(代表取締役であるか否か)が一番重要なことですので、書面や名刺などには、代表取締役であることの表示を忘れないようにすべきです。
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