社外監査役を欠いたとき
当社には監査役が4名いたのですが、そのうち社外監査役であるA氏が事故で急死してしまいました。残る3名の監査役はいずれも社内監査役ですが、このような場合、どうしたらよいでしょうか。
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平成5年施行の商法改正で、いわゆる大会社については、監査役の員数は3名以上とし、うち1名以上は、その就任前の5年間、その会社または子会社の取締役、支配人その他の使用人ではなかった者であることを要するとされました。このような社外の人物である監査役を一般に社外監査役といい、社外監査役を含む監査役全員で監査役会を構成し、監査にあたるべきこととされたのです。その趣旨とするところは、監査をより第三者的、客観的立場から行うことによって、充実した監査を実現しようとの点にあります。したがって、社外監査役の死亡により監査役の員数が3名未満とならない場合であっても、会社の唯一の社外監査役が死亡したときは、この定めに違反することとなります。
では、社外監査役を欠いたままの状態は、どのような法的効果をもたらすでしょうか。
いうまでもなく、監査報告書は監査役会が作成すべきものとされていますが、社外監査役を欠く監査役会は適法に構成された監査役会とはいえませんから、そのような監査役会の作成した「監査報告書」は、本来の監査報告書としての効果を持ち得ません。したがって、この報告書に、計算書類を適法とする会計監査人の監査意見を相当でないと認めた旨の記載がない場合でも、計算書類につき定時株主総会の承認決議を省略してよいとの効果はないことになります。
また、社外監査役を欠いたにもかかわらず、遅滞なく後任者を選任しなかった場合には、取締役が100万円以下の過料に処せられることになっています。
上記のような法律の定めであれば、ただちに後任者を選任すべきことは当然です。ただ、そのためには株主総会を招集し、新たに選任決議を得ることが必要です。
それでは、社内外の事情で、ただちに株主総会を招集できなかったり、後任者の適材を得にくい場合はどうしたらよいのでしょうか。
前任社外監査役が、任期満了、または辞任により退任した場合であれば、後任者の就職までの間、前任者がなお監査役としての権利義務を有するものと商法に定められています。後任者の選任までの間の混乱を回避しようとしたもので、この規定の適用がある場合はこれで対応できるでしょう。
しかし、本問のケースのように前任者が死亡により退任した場合にはこの規定の適用の余地はありません。このようなとき後任者の選任が遅れるようでは、混乱は避けられないことになります。そこでこの場合には、株主、取締役、他の監査役、会計監査人、使用人などの利害関係人が、裁判所に対し、一時監査役の職務を行うべき者の選任を請求することができるとされ、これにより対応することが考えられます。この監査役を一般に「仮監査役」と称しています。
死亡の場合のほか、解任、法定欠格事由の発生などにより唯一の社外監査役が退任した場合も、退任した前任者が、後任者の就職までの間引続き、監査役としての権利義務を有するとの商法の規定の適用を認めることは不適当ですから、これらの場合も仮監査役の選任を請求することにより対応することになるでしょう。
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