取締役の人数が少なくなったとき

 取締役の人数については、当社の定款で「10名以内」と定めていますが、実際には7名しかいません。次回の株主総会で、このうちの3名が辞任することになっていますが、後任者を選任しなければならないでしょうか。

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 言うまでもないことですが、取締役は会社経営の中心的役割を担う重要な職務を担当しています。そこで取締役を何名とするかは、誰を選任するかとも関連して会社にとって極めて大事なことです。その意味で商法上の規定とは別に定款で取締役の人数を規定する例が多いようです。
 本問も定款で取締役の人数を「10名以内」と定めていますが、本問の場合にただちに後任の取締役選任の必要があるかどうかは、この定款の解釈が前提となります。この点から考えてみましょう。
 株式会社の取締役の人数について商法は、会社の大小に関係なく「3人以上」と定めています。すなわち最高限は定めず最低限を3名としたわけです。最低限を3名としたのは、取締役が取締役会を構成し合議体として会社の経営に関する意思決定をする以上、それにふさわしい人数は必要だと考えられたためです。これに対し最高限については会社の規模、業態などさまざまな要素が考えられることから、会社の自由にまかせています。したがって最低限の3名以上を守るかぎり、定款でどのように人数を定めることも会社の自由ということになります。
 ところで会社の定款は取締役の人数を「10名以内」と定め、最高限が10名であることはわかりますが、最低限の定めがありません。このような定款は最低限について法定の人数どおりとする趣旨が含まれているものとみて、最低限は3名とするものと理解されています。したがって貴社の定款は3名以上10名以内の人数を定めているものとして商法上適法有効なものと考えられるのです。
 本問では従来定款の範囲内で7名の取締役を選任していたわけですが、このたび3名の辞任が予定されているとのことですから、その結果取締役として留まるのは4名ということになります。
 しかし商法および会社の定款上取締役の最低限は3名ですから、3名辞任後もまだ最低限の人数はみたしています。したがってこのような場合ただちに臨時の株主総会を開催して後任の取締役を選任する必要はなく、補充の必要があれば次回の定時株主総会において選任すればよいということになります。
 ところが、もし辞任者がさらに多く残任者だけでは最低限の人数にも達しないという場合にはそうはいきません。そのような場合には会社は遅滞なく株主総会を招集してその欠員を補充すべく取締役の後任者を選任しなければなりません。もしこれを怠れば、代表取締役は過料の処分に処せられることもありえます。さらに必要があれば裁判所に請求して取締役の職務代行者を選任する必要も出てきます。職務代行者が選任されない場合には、退任した取締役が新取締役が就任するまでの間、なお取締役としての権利を有し義務を負うことにもなります。
 しかしさらに考えてみますと、本問の会社の場合商法および定款上の最低限の人数を欠いていないとはいえ、従来7名いた取締役のうち半数近くの3名が一時に退任するというのですからやや異常な事態と言うべきです。いろいろ事情があるのかもしれませんが、このような場合、辞任する取締役が従来担当していた業務を残任者だけできちんと引き継ぎ対処できるか懸念がないわけではありません。
 したがっていかに最低限の人数をみたしているとはいえ、会社の運営に支障をきたすような事態が予想されるときは、会社は遅滞なく株主総会を招集して取締役の補充選任決議をする必要があります。その必要があるかどうかの判断は最終的には代表取締役に任されることになるでしょう。

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