定款で取締役の人数を定めるとき

 定款で取締役の人数を定めようと思いますが、どのように定めたらよいでしょうか。最高限と最低限の人数を決めるのか、あるいは具体的に何名としなければならないのでしょうか。

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 取締役の人数を決定するにあたっては法律上の要求をみたすかぎり、定款で自由に定めることができます。しかし具体的にどのように定めるのか、たとえば最高限と最低限を定めるのか、あるいはそのいずれかを定めるのか、さらに具体的に何名と一定数を決めてしまうのか、などいろいろな方法が考えられます。そして法律的にいずれも自由だとしても、どのような形が実際的か、という問題も考えなければなりません。
 株式会社の取締役の人数は商法上3名以上と定められ、最低限の定めはありますが、最高限の定めはありません。有限会社の取締役は有限会社法上1名以上とされているのですが、株式会社の場合取締役は取締役会という会議体を構成し、そこでの合議によって会社の経営に関する意思決定を行おうとしているのですから、最低限このような会議にふさわしい程度の人数は必要と考えられたためです。
 しかしこの商法上の要求をみたすかぎり、取締役の人数の最高限、最低限を定款でどのように定めても自由です。
 たとえば定款に「当会社には5名以上10名以下の取締役を置く。」とあれば、最低限を法定の3名から5名に引き上げ、最高限を10名としたものとして有効です。
 また定款で「当会社には10名以内の取締役を置く。」とあれば、最低限は法定の3名で、最高限を10名とした趣旨に解され、もちろん有効です。
 さらに「当会社には5名以上の取締役を置く。」と定款にあれば、最低限を法定の3名から5名に引き上げ、最高限はあえて定めないものとして有効です。
 もちろん「当社には5名の取締役を置く。」と定款で定めても、法定の3名以上ですから、有効であることに問題はありません。
 結局、法定の人数をみたしていれば問題はなく、何名とするかはもちろんのこと、最高限および最低限の双方を定めるか、そのいずれかのみを定めるか、さらに具体的に何名と一定数を定めるかといった、定款での定め方自体が自由である、ということになります。このことは私的自治の原則からいって当然のことでしょう。
 もっともどのような定め方をするかにより、取締役の人数が少なくなった場合に実際上の差異が若干出てきます。
 一度選任された取締役でもその後の事情で辞任したり解任されたりする場合もあります。また生身の人間ですから死亡などの事態により退任を余儀なくされることもありうることです。このような事情から当初の取締役の人数が減少することがありえます。
 このような場合でも残りの人数が法律上または定款上の最低限の人数をこえている場合は、ただちに後任者を選任するとか職務代行者の選任を求めなければならないとか、格別の対応を求められることはありません。
 これに対し、法律上または定款上の最低限の人数を欠くこととなる場合は問題です。会社としては遅滞なく株主総会を招集してその欠員を補充すべく後任の取締役を選任しなければなりません。これを怠れば代表取締役には過料の制裁もあります。そしてその際必要があれば裁判所に請求して職務代行者を選任するなどの措置が必要となります。
 以上からおわかりのように、法律上または定款上の最低限の人数に何人かを加えて若干の余裕をもった人数の取締役を選任しておけば不測の事態にも備えることができます。したがって定款で人数を定めるのであれば余裕をもった選任が可能となるような形の定め方、すなわち最高限を定めない形か、最高限と最低限に多少の幅を生ずる形が望ましいと言えましょう。取締役は何名、と一定数で決めてしまうとこのような余裕を作ることができませんので、実際的ではないように思われます。

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