独禁法による役員兼任の制限

 取締役や監査役が他の会社の役員を兼任するについては、独占禁止法の規定にも留意しなければならないと聞きました。どのようなことでしょうか。

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 取締役や監査役の兼任については、これまでふれてきたような商法上の規制があるほか、独禁法上の規制も忘れてはなりません。
 独禁法は正式には「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」という長い名前の法律です。この法律は、私的独占、不当な取引制限、不公正な取引方法を禁止し、事業支配力の過度の集中を防止し、企業結合、協定などによる事業活動の不当な拘束を排除することにより公正かつ自由な競争を実現し、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的かつ健全な発展を促進しようとする法律です。
 このように独禁法の目的は複雑多岐にねだりますが、企業間の不当な支配を排除しようとしていることは明らかで、この見地から役員兼任を制限しようと考えているのです。
 独禁法はまず、会社の役員または従業員が、他の会社の役員の地位を兼ねることにより、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合には、他社の役員の地位を兼ねる この場合の「役員」とは、取締役、監査役ばかりでなく、顧問、相談役、参与、支配人、本店または支店の営業の主任者などを広く含みます。また「従業員」とは、継続して会社の業務に従事する者で役員以外の者をいう、と定められています。
 「一定の取引分野における競争」というのはややむずかしい概念ですが、複数の事業者間の競争機能が競合し、対等な取引関係が形成されている競争市場を意味すると言われ、「競争を実質的に制限する」というのは、このような市場の競争機能を排除することを意味すると解されています。具体的には、取引の対象、地域、取引の相手方、業態などを基準としながら、独禁法の立法趣旨と取引通念に照らして判断されることです。
 同時に独禁法は、会社が不公正な方法により、自己と国内において競争関係にある他の会社に対し、自己の役員がその会社の役員もしくは従業員の地位を兼ねるべきことを強制することができない、としています。
 「役員」「従業員」の意味はさきほどと同じですが、「強制」とは、不公正な取引方法を用いて競争会社の事業活動に打撃を与え、その混乱に乗じて役員兼任を承諾させることをいいます。
 また、「不公正な取引方法」とは、公正な競争を阻害するおそれのある行為をいい、具体的には、不当に他の業者を差別的に取り扱うこと、不当な対価をもって取引すること、不当に競争者の顧客を自己と取引するように誘引し、または強制すること、相手方の事業活動を不当に拘束する条件をもって取引すること、自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引すること、自己または自己が株主もしくは役員である会社と国内において競争関係にあるほかの事業者とその取引の相手方との取引を不当に妨害し、または当該事業者が会社である場合においてその会社の株主もしくは役員をその会社の不利益となる行為をするように不当に誘引し、そそのかし、もしくは強制すること、のいずれかに該当し、公正取引委員会が指定するものをいいます。
 以上の独禁法の規定に違反すると、1年以下の懲役または200万円以下の罰金(届出の規定に違反した場合は200万円以下の罰金のみ)に処せられることにもなりますので注意が必要です。ことができない、としています。

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