ニ社の監査役を兼任できるか

 関連会社の監査役が高齢で引退することになったため、当社の常勤監査役に関連会社の監査役を兼任させたいと思っていますが、何か問題があるでしょうか。

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 親会社の監査役が関連会社の監査役を兼任することは実際上しばしば見受けられることです。他に適任者がいないといった事情もあるでしょうが、両社の監査役を兼ねていたほうが両社の実態を良く把握できることにもなり、監査を行うにつき好都合な面もあるためと思われます。
 しかしこのような監査役の兼任も、一方が常勤監査役である場合にはその常勤性との関係で問題を生じます。会社の規模によっても事情の違うところですので、場合を分けて検討することとしましょう。
 会社が資本金5億円以上か負債額200億円以上の、いわゆる大会社の場合は、監査役は3名以上置くことを要し、うち少なくとも1名は常勤の監査役でなければならないとされています。このような大会社では監査はとくに重視されるべきですから、複数監査役体制で監査の充実を図ろうとしているわけです。
 ところで、ここでいう「常勤」とは、その監査役が原則として勤務する場所において営業時間中つねに監査役の職務に従事しうる態勢にあることをいう、と解する考え方が有力です。そうだとすると貴社の常勤監査役が関連会社の監査役となることは、たとえ関連会社の監査役が常勤のものでないとしても、貴社の監査役としての常勤性と抵触することとなります。したがって2名以上の常勤監査役がいない限り上記の対応をとることはできないと解すべきでしょう。
 もっとも、関連会社が、100%出資の子会社であって本店所在地も同じ、といったような場合には両社の監査役を兼ねても実質的に常勤性と抵触しないということもありうるかもしれません。しかし、そのような場合であってもほかの会社の監査役を兼任していたため充分に監査の職務を果していなかったなどと主張され、責任を追及されるおそれもありえますので、できるかぎり兼任は避けた方が賢明であると思います。
 それでは株式会社の監査特例法の適用対象外の中会社か、資本金1億円以下で負債額も200億円未満の、いわゆる小会社である場合はどうでしょうか。
 このような会社では監査役の数も常勤非常勤の別も法律では定められていません。そうであれば監査役が関連会社の監査役を兼任することも商法上何ら問題はないはずです。
 しかし、貴社では常勤監査役が置かれているとのことですので、貴社が中小会社だとしても定款により常勤監査役が置かれているものと思われます。そうだとするとここでも先ほどの大会社における法定の常勤監査役の場合と同様、関連会社の監査役との兼任が貴社の監査役としての常勤性と抵触するのではないかとの問題を生じます。違うのは大会社の場合は法令により設置を義務づけられている常勤監査役で、この場合は定款により自主的に設置されている常勤監査役だという点だけで、その両者の常勤性に差異があるか否か、という点がここでの問題です。
 しかし、たとえ定款により設置された常勤監査役であっても、あえて常勤として選任された以上法令による常勤監査役と同様の役割が期待されているものと考えるのが妥当です。したがって両者の常勤性に差異があるとは考えられず、先ほど法定の常勤監査役について述べたことがそのまま妥当します。貴社の常勤監査役が定款で定める人数を超えていない限り関連会社の監査役を兼任することは貴社の定款上できないと解すべきです。
 結論として、貴社が監査特例法上の大会社であれ中小会社であれ、法律ないし定款で要求する人数を超える常勤監査役がいない限り、貴社の常勤監査役が常勤のまま関連会社の監査役を兼任することはできないと解すべきですし、できると解される場合があるとしても避けた方が賢明です。どうしてもその者を関連会社の監査役にしなければならない事情があるのでしたら会社の監査役としては非常勤とするしかないでしょう。そうでなければ会社の他の非常勤監査役を派遣するほかないものと考えます。

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