親会社取締役と子会社監査役の兼任はできるか

 当社の取締役Aに、当社が60%出資している子会社の監査役を兼任してもらいたいと思っています。このように、親会社の取締役と子会社の監査役を兼任することに問題はないでしょうか。

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 親会社と子会社の間で、役員をはじめとする人的交流が行われることは良く見受けられるところです。たしかに両会社の実情を知る人が業務執行や監査にあたることが、現実的で好ましい点もあるでしょう。しかしときにはそれが不都合を生ずることも考えられないではありません。このような考慮から、法律は一定の場合に役員の兼任を禁ずる規定を置いています。その例として商法276条、独占禁止法13条を挙げることができます。
 商法276条は、「監査役ハ会社又ハ子会社ノ取締役又ハ支配人其他ノ使用人ヲ兼ヌルコトヲ得ズ」と定めています。監査役は、会社の業務ないし会計を監査する者として、会社からの独立性を保証されていることが大切です。そのため取締役はもちろん、会社の指揮命令を受ける支配人その他の使用人との兼任を禁じられ、その範囲は当該会社にとどまらず、親会社の指揮命令を受ける子会社の取締役、支配人その他の使用人との兼任にまで及びます。
 しかし商法276条が上記の範囲での兼任の規制だとすると、本問のような親会社取締役と子会社監査役との兼任はその対象外だと言うことができます。たしかに親会社は子会社の業務を指揮する地位にあるのですから、親会社取締役として自ら指揮して行った子会社の業務を、子会社監査役として監査することは、いわば自分で自分を監査することにも等しいこととなり、弊害が考えられないわけではありません。しかし、立法論は別として、現行商法の兼任禁止規定に触れないことは間違いありません。
 独占禁止法13条は、ある会社の役員または従業員が、他の会社の役員を兼任することにより一定の取引分野における競争の実質的制限を生ずることとなる場合、その役員兼任を制限しています。言うまでもなくその趣旨は、自由競争を阻害するような不当な企業結合を阻止しようとする点にあります。
 しかし、本問のような親子会社間での役員兼任がこれに該当することはまずあり得ないでしょう。それというのも役員兼任によって競争の実質的制限になるような場合であれば、独占禁止法9条・10条によりそもそもそのような株式保有による会社支配そのものをなしえないわけで、本問のような親子会社関係が成立しえないからです。
 このように見てくると、本問の場合の兼任は何ら法的に制限を受けるようなものではなく、許されることになります。
 ただ、親会社取締役と子会社監査役の兼任については、手続上その責任の所在を明らかにする意味で、株主総会において受任者に関する情報を公示することとされています。
 すなわち株式会社で、親会社の取締役、監査役が他の会社の無限責任社員、取締役、監査役または支配人を兼ねる場合には、計算書類規則によりその業務の状況の明細(重要でないものを除きます。)を附属明細書に記載しなければならないとされ、さらに兼任会社の営業が会社の営業と同一の部類のものであるときはその旨を付記しなければならないとされています。また子会社の附属明細書にも同様の兼任の公示をすることが求められます。
 これに対し親会社または子会社が有限会社の場合にはこのような規定かありませんので、公示の必要はないと解されています。

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