監査役は取締役を兼任できるか

 監査役が取締役を兼任することはできないでしょうか。また、取締役が支店長や部長を兼任している例はよくありますが、監査役についてはどうなのでしょうか。

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 中小企業の多くは、取締役、監査役を親族で占めています。中小企業の多くは個人企業であるという現実からすればやむをえないことでもありましょう。個人企業のような場合、人数の点でも人材が足りないという制約をうけざるをえませんから、取締役が監査役をも兼任できるとすれば好都合なことも多いと思われます。
 しかしながら商法は、監査役はその会社または子会社の取締役または支配人そのほかの使用人を兼ねることができないと定め、監査役と取締役または使用人との兼任を禁じています。その趣旨はどのような点にあるのでしょうか。
 監査役は、取締役の業務執行ないし会計が商法その他の法令に適合しているか否かを監督する立場の会社役員です。国家にたとえると、取締役会が内閣にあたるとすれば、監査役はちょうど裁判所にあたる役割を担っています。裁判所が司法機関として国会または内閣の行為が憲法、法律に違反していないかどうかチェックする作用を全うするために、国会や内閣からの独立性が保障されていることはご承知のとおりです。監査役もまた自らの職責を全うするためには、取締役会ないし取締役からの独立性が保障されていなければなりません。そうであれば同一人がひとつの会社の取締役と監査役を兼任することが認められないのは当然であるといえます。また形式的には同一会社でなくても、発行済株式総数の過半数の株式または資本の過半の出資口数を有している親会社の監査役は子会社に対しても一定範囲の監査権限を持っています。したがってこのような子会社の取締役との兼任も同様の趣旨から禁じられています。要するに、監査役の地位の独立性を保障しひいて監査業務の公正を期する、というのが兼任禁止の趣旨ということができます。
 それでは、上述のような商法の規定に違反して監査役がその会社または子会社の取締役に選任された場合、または反対に取締役がその会社または親会社の監査役に選任された場合、その選任の効力はどうなるのでしょうか。
 このような選任決議の趣旨が明らかに従前の地位と新たな地位を兼任させるのだということが明白な場合には、その選任行為は商法違反として無効となるのは当然でしょう。
 しかし兼任させるものかどうか趣旨がはっきりしない場合もあると思います。その場合には選任行為は当然に無効となるものではなく、それぞれ従前の地位を辞任することを条件としていると解釈して選任自体は有効と解するのが通説的見解です。この場合、新たに監査役または取締役に選任された者がその地位に就任することを承諾したときには、これと両立しえない従前の地位を辞任する意思表示をしたものと解されています。
 本問にもあるように、取締役が支店長や部長といった使用人を兼任している例は少なくありませんが、監査役の場合はこのような兼任の例はないはずです。
 というのも、取締役の場合このような使用人との兼任を禁ずる規定がないのに対し、監査役についてはその会社または子会社の支配人そのほかの使用人との兼任も明文で禁じられているからです。ここでいう「使用人」とは、会社との雇用契約により職務の遂行につき会社の指揮命令をうけるものをいう、と広く解されていますから、対外的代理権を有するいわゆる商業使用人ばかりでなく、工場長、技師などの商業使用人以外の使用人も含まれます。
 そもそも会社の使用人として取締役の指揮命令をうける立場にある者が監査役を兼ねた場合、自分の上司にあたる取締役の職務の執行などの監査を充分にできるはずはありません。そこで昭和25年の商法改正の際、監査役が使用人を兼ねることを禁止して監査役の地位の独立性を徹底し、監査の公正をはかり、実効性を確立しようと考えたわけです。これにより従来見られたような、監査役と総務部長、経理部長との兼任といったようなことは商法に違反するものとして認められなくなりました。

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