公務員は会社役員になれるか

 当社では公務員Aを役員として迎え入れようと考えていますが、やはり退職してからでないと支障があるでしょうか。

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 公務員が退職後民間企業に再就職することはよく見られることであり、ときに「天下り」と批判もうけることです。このような例が多く見られるのは、公務員としての在職中の経験が企業にとっても有益であることや、有能な人材が多い、ということにもよるのでしょう。しかし、いかに有益であり有能であるからといっても、在職中の公務員を役員に迎えることは基本的に不可能なことです。また、退職後だからといっても無制限に役員として迎えられるというものでもありません。順を追って説明することにしましょう。
 公務員は憲法上「全体の奉仕者」と規定され、公務の公正と完全な遂行によって国民の期待に応えるべきものとされています。そのために営利的企業へ関与することが禁じられているのです。そして国家公務員法および地方公務員法がその制限を具体的に強化しています。その第1の現われが、兼業禁止の規定であり、第2の現われが、天下り人事制限の規定です。
 国家公務員も地方公務員も、会社の役員などを兼務することは原則として禁じられています。しかもこのことは報酬をうけるかどうかに関係ありません。ただし国家公務員については、人事院規則の定めるところにより、所轄庁の長の申出により人事院の承認を得た場合には、例外として許されることになっています。また、地方公務員の場合については、任命権者の許可を得た場合に、例外として許されることになっています。
 このような兼業禁止の規定が置かれている趣旨は、公務員はいつなりとも職務に専念するべき義務を負い、しかも公務の公正さに対する信用を傷つけたり、職員全体の不名誉ともなるような行為をしてはならない、との信用失墜行為禁止の義務を負っていることに由来するものです。そのため、人事院の承認なり任命権者の許可がおりて会社役員などとの兼職が認められるのは、このような公務員の負う義務との抵触のおそれのない、極めてまれな場合にかぎられるものと思われます。
 国家公務員は、離職後2年間はその離職前5年間に在職していた、人事院規則で定める国の機関と密接な関係にある私企業への就職が禁じられており、そのような会社の役員などになることも禁じられています。これについても人事院規則の定めるところにより所轄庁の長の申出により人事院の承認を得た場合に例外として許されることになっています。
 この規定は、いわゆる「天下り」を制限したもので、これを無制限に認めた場合に懸念される、公務と私企業との癒着の危険と、公務に対する国民の不信を防止しようとする趣旨にもとづくものです。ただし兼業禁止の場合と異なり、離職後のものであって、しかも離職後2年間の時限つきの制限ですから、兼業禁止の場合にくらべ許容される場合が多いと思われます。
 以上から明らかなように、在職中の公務員Aを役員に迎えることは人事院の承認または任命権者の許可を受けないかぎり不可能であり、その許可は、通常の会社の役員の場合にはまず認められないことがおわかりいただけたと思います。もしこれに違反した場合には公務員は懲戒処分をうけるおそれがあります。
 また退職後であっても国家公務員の場合は人事院の承認がないかぎりただちに役員として迎えることができない場合もありますので、この点も注意していただきたいと思います。

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