破産者は会社役員になれるか

 Aは破産者ですが、有能で適材な人物であり、こんどの株主総会で取締役に選任したいと思っています。株主総会で決議すれば選任することができるでしょうか。

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 突然の発病によって健康がそこなわれるのと同様に、事業の失敗などによって人は多額の債務を背負わされてしまうことがあります。このような場合に返済の見通しのない債務でいつまでも苦しめるよりも、債務者の総財産はすべての債権者に公平に分配し、残余の債務については責任を免除して債務者に再起の機会を与える、という方が建設的だと言って良いでしょう。個人破産および免責の制度は、今日このような趣旨で活用されています。そして、申立てにより裁判所から破産宣告を受けた者を破産者といいます。
 破産宣告をうけると、破産者が宣告時において有する一切の財産は破産財団という扱いをうけ、破産者はこの破産財団に属する財産の管理処分の権限を失い、この権限は裁判所から選任された破産管財人に移ることになります。
 破産者は後見人、補佐人、遺言執行者になれないほか、弁護士、公証人、公認会計士になる資格を失うなどの資格制限をうけます。これらの制限は、復権といって、従来の能力を回復することが認められるまで続きます。また、合名会社、合資会社の社員は破産によって当然退社となり、株式会社の取締役、監査役は破産によって当然退任となります。破産によって会社との信頼関係が失われると考えられるからです。
 これに対し、破産宣告をうけ復権をしない者が、新たに取締役または監査役などの会社役員になれるかどうかについては従来明文の規定がなく解釈上の争いがありました。
 これを認めてよいとする説は、これを否定する明文の規定のないことや、広く人材を求める見地から破産者といえども適材であれば役員として迎える方が適当であること、などを理由としていました。
 しかし会社役員は株式会社の機関として会社、第三者に対し重大な責任を負い、場合によっては莫大な金銭債務を負う場合も考えられるにもかかわらず、破産者ではその負担能力に欠けることともなります。とくに取締役について言えば、前述のように破産者は破産財団に所属する財産に関して管理想分権を持たないにもかかわらず、会社の代表取締役となった場合には会社財産の管理想分権を有することになり、いかにもバランスを欠くことになります。このような理由から破産者で復権を得ていない者は会社役員となることができない、と解するのが多教説でした。
 最高裁判所の判例も、同様の理由から破産者で復権を得ていない以上取締役となることはできない、としていました。
 以上のような判例、学説の動向をふまえ、昭和56年の商法改正において、取締役、監査役の欠格事由、すなわちこれらになれない楊合のひとつとして「破産ノ宣告ヲ受ケ復権セザル者」が規定されるに至ったのです。
 したがって、現行の商法では、いかにA氏が有能で適材であっても、復権をうけていないかぎり取締役に選任することはできません。仮に株主総会でこれを議決しても商法違反で無効ということになります。
 それでは破産会社の代表取締役を別会社の代表取締役ないし取締役に選任することは商法上問題はないのでしょうか。現実としてこのような例はかなり多いのですが、破産会社が、形式的には会社であるものの実質的には個人企業といってもよいような場合は、以上述べてきた個人の破産者の場合と大差ないように思われ、別に扱うことは不自然なようにも思われます。
 しかし、破産会社の役員は、役員個人が破産宣告をうけたわけではないので、立法論は別としてこのような者は取締役、監査役の欠格事由には該当しないことは明らかです。そうである以上解釈論としてはこれを認めざるをえないと考えられます。

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