会社役員を株主に限定できるか

 当社では従来より会社役員はすべて株主から選任してきましたが、今後もこの方針でいきたいと思っています。定款でその旨を定めることはできるでしょうか。

スポンサーリンク

 取締役、監査役といった会社役員は、株主の中から選任されることが多いようです。とくに株式会社の大多数を占めるいわゆる中小企業では、ほとんどの場合に株主の中から選任されているのが現実です。そうであれば、定款において会社役員は株主から選任する旨の定めを置いたとしてもたんに現実を追認するだけのことで、格別問題はないように思われるかもしれません。
 しかし、商法は明文をもって、会社役員を株主に限る旨の定めを定款に置くことを禁じているのです。これはいったいどうしてなのでしょうか。
 もっともこの点に関する商法の定めは当初から現在のような形であったわけではありません。現行法の趣旨を理解するうえでも有益だと思いますので、まず法の規定がどう変わってきたかを概観してみることにしましょう。
 昭和13年以前は、取締役、監査役は株主から選任すべきものとされ、しかもその有すべき株式の数を定款で定めるべきものとされていました。当時は、会社は資本の拠出者である株主によって経営されるべきもので、それが責任のある経営につながる、と考えられていたのです。
 ところが昭和13年の商法改正により、取締役、監査役は必ずしも株主の中から選任することを要しないものとされました。企業も大規模になるにしたがい、しだいに株主の関心は経営に関与することよりも株価の値上りや利配当の増加に移り、いわゆる会社の所有と経営の分離が進み、必ずしも株主が取締役、監査役として適任とは言えなくなってきたからです。しかし、この時点では定款で株主の中から選任する旨を定めることまでは禁じられていませんでした。
 その後昭和25年の改正により、現行法の形、すなわち取締役、監査役は定款をもってしても株主に限ることはできないことになりました。昭和25年の商法改正は取締役に経営に関する大きな権限を与え、取締役会を経営の中心に置く内容の改正となっています。所有と経営の分離が進行していることから、会社の経営は会社の所有者である株主に任せるより経営者にふさわしい専門的知識や識見を有する者に任せた方が適当だとする考えが一般的になったからです。そして適材を広い範囲から得るためにも、取締役は株主に限定する旨の定款規定を置くことはむしろ有害無益だと考えられるようになりました。監査役についても事情は同じです。株主に監査を任せるより専門的知識や経験のある者にこれを任せる方が現実的と言うべきでしょう。以上のような趣旨から現在のような商法の規定となったわけです。
 したがって、現在では本問のような形での定款を置くことはできないことになっています。
 いわゆる大企業にあっては、法人などの機関株主の持株比率が増加し、個人夫株主が少なくなるとともに、機関株主の場合は相互に株式を持ち合う現象が多くみられます。これにより、大株主でなくとも、あるいはまったく株を持だなくても会社役員に選任されることが現実的にも可能となり、大企業では商法の定める理念は現実化されているとも言われています。
 これに対し中小企業の場合には、その多くが個人企業的色彩が強いため、圧倒的多数の場合に株主が会社役員に選任され、株主以外の者が選任されることは極めてまれなようです。
 むろん商法は定款をもって株主に限定する旨を禁じているにすぎず、事実上会社役員が株主から選任されることまで禁じているわけではありませんから、このような現実が違法視されるわけではありません。その意味で商法の定めは、株主以外の者が会社役員となる可能性を保証しているもの、と理解することができましょう。

copyrght(c).会社役員の法務.all; rights; reserved

会社役員とは
発起人とは
取締役と代表取締役
業務担当取締役とは
社外取締役とは
取締役の肩書の付け方
相談役・顧問とは
取締役会長とは
使用人兼務取締役とは
執行役員とは
常勤役員と非常勤役員の区別
監査役とは
社外監査役とは
社内監査役と社外監査役
会計監査人とは
検査役とは
会社役員は労働者か
会社役員と社会保険の適用
会社役員と労働保険の適用
労災保険の特別加入制度とは
取締役と監査役との関係
取締役会と代表取締役・取締役との関係
会社役員と株主総会との関係
会社役員と株主との関係
株主総会と取締役会との関係
役員規模はどのように定めるか
会社役員の資格に制限はあるか
在任中の取締役に欠格事由が生じた場合
破産会社の会社役員は役員欠格者となるか
会社役員を株主に限定できるか
未成年は会社役員になれるか
破産者は会社役員になれるか
法人は会社役員になれるか
公務員は会社役員になれるか
懲役刑の執行猶予中の者は会社役員になれるか
会社役員を日本人に限ってよいか
監査役は取締役を兼任できるか
親会社取締役と子会社監査役の兼任はできるか
親会社監査役と子会社取締役の兼任はできるか
海外子会社の取締役を兼任できるか
ニ社の監査役を兼任できるか
子会社の取締役兼任と競業取引
親子会社の取締役兼任と自己取引
独禁法による役員兼任の制限
会社役員の人数に制限はあるか
監査役の増員
定款で取締役の人数を定めるとき
取締役の人数が少なくなったとき
監査役の人数が少なくなったとき
社外監査役を欠いたとき
定款所定の人数をこえた役員の選任
代表取締役が行方不明になったとき
取締役の選任方法
取締役の任期の定め方
取締役の職務
取締役の一般義務
取締役が負う民事上の責任
取締役会とは
株主総会の性格と機能
役員の報酬はどのようにして決めるか
有限会社の役員の人数や資格に制限はあるか
税法上の役員とは
交際費の判断基準
寄付金の経理の方法
創業祭等の協賛金
交際費と福利厚生費の区分
創立記念パーティーに要した費用
使途不明金の意味
法務上の役員の範囲
役員退職給与と使用人に支給する退職金との取扱いの差異