会社役員の資格に制限はあるか
取締役や監査役の資格について何か制限はあるでしょうか。たとえば監査役は仕事の性質上、公認会計士や税理士でなければならないといった制限はありませんか。
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「企業は人なり」と言われることがあります。従業員を含めた人的要素が、会社を発展させるかどうかの重要な要素であることは常識です。取締役や監査役といった会社役員は、会社の経営に関する事項の意思決定に参画したり、業務や会計に法令違反がないかどうかを監督したりする重要な役割を担っているわけですから、それにふさわしい人材を得ることは会社にとって何にもまして重要なことです。そのような意味で会社役員となるについて何らかの資格が必要ではないか、との疑問が生ずるのも当然と言えましょう。
取締役は、取締役会の一員として会社の経営に関する意思決定に参画する立場にあります。このような重要な役割を負う取締役ですが、その地位につくにあたり、法律は何らの積極的資格を要求していません。むしろできる限り広い範囲から適材を得られるようにするため、取締役を株主に限るとする定めを定款に置くことすら認めていないくらいです。したがって、性別、学歴などにかかわりなく取締役となることができるわけです。
もっとも法律は一定の事由がある者は取締役になれないとする欠格事由というものを定めていますし、他の役職と兼ねて取締役となることができないとする兼任禁止を定めて置いていますので、これについて説明しておきましょう。
欠格事由は、昭和56年の商法改正により加えられた規定で、次のような事由がある場合には、取締役になることができない、とするものです。すなわち、禁治産者または準禁治産者、破産宣告を受けてまだ復権をしない者、商法、株式会社の監査特例法または会社法に定められている罪を犯して刑に処せられ、その執行を終わった日または執行を受けることがなくなった日から2年を経過していない者、上記以外の罪によって禁銅以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで、またはその執行を受けることがなくなるまでの者(ただし刑の執行猶予中の者を除く)、このような者は財産管理、処分能力の点や社会的信頼の点で取締役となるにふさわしくない、と考えられるからです。
また、取締役の業務執行や会計が適法になされているかどうかを監督する役割を持つ監査役が、取締役との兼任であっては監督の意味がありませんから、監査役はその会社または子会社の取締役になれないことになっています。
なお、競業関係にある他の会社の役員を兼ねることが、制限される場合もあります。
監査役は、前述のように取締役の職務執行が法令に違反していないか、会計に関し違法の点はないか、などについて監督を行う立場にあります。その意味で取締役に優るとも劣らない重要な役割を担っているわけですが、これについても取締役同様、その地位につくにつき、何らの積極的資格を必要としていません。
他方、欠格事由と兼任禁止の定めのある点も取締役と同様です。もっとも兼任禁止については、監査役はその会社、子会社の取締役のほか、支配人その他の使用人と兼ねることができないと定められており、取締役の場合よりも兼任禁止の範囲が広くなっていることに注意を要します。取締役は支配人その他の使用人と兼任することができ、その実例も多いのですが、監査役の場合は、その独立性を確保して監査の実を挙げるため、取締役の業務執行の一翼を担う立場の使用人との兼任を認めない、とする趣旨からです。
以上から明らかなように、会計についての監督の責任を負う監査役だからといって、公認会計士や税理士といった会計に関する一定の資格のあることまでは求められていません。もっともこれでは規模が大きく、業務も複雑な大会社の場合など監査役の職務執行について不安がある場合もあるので、資本金が5億円以上もしくは負債の額が200億円以上のいわゆる大会社では、監査役の監査のほかに公認会計士または監査法人を会計監査人に選任して監査を受けなければならないとする規定があり、監査を補充しています。
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