取締役と監査役との関係

 会社には、経営にあたる取締役とその経営状態を監督する監査役がいますが、この両者の関係について詳しく教えてください。

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 監査役は、取締役の職務の執行を監督・監査する職務権限を有していますが、監査役の職務権限は、昭和49年の商法改正以来、大会社・中会社と小会社では大きく異なっています。以下に詳しくご説明します。
 昭和49年に商法が改正され、それまで会計監査のみであった株式会社の監査役の職務を、資本金1億円以下の会社(小会社)ではそのままとする一方、資本金が1億円をこえる会社については、会計監査はもちろんのこと取締役の業務執行そのものの監査(業務監査)をもその職務としました。業務監査は、昭和25年の商法改正以前は、監査役の職務とされていましたので、昭和49年の改正は、小会社以外の会社については、監査役の権限の復活とも言えるでしょう。
 また、昭和49年の改正では、資本の額が5億円以上の会社(大会社)については、監査役の監査のほかに、会計監査人の監査が必要としました。
 昭和56年の商法改正では、資本金額にかかわりなく、負債総額が200億円以上の会社は前記の大会社に含めて、厳格な監査に服させることにするとともに、大会社については監査役は2人以上とし、そのうち最低1名は常勤の監査役でなければならないとしました。また、監査役が取締役会を招集できる場合を規定したり、監査役の報酬を取締役の報酬とは区別して定めるべきとするなど、監査役の地位を一層強化しました。
 さらに、平成5年の改正で、大会社の監査役の員数は3人以上とし、うち1人以上は社外監査役(就任の前5年間その会社またはその子会社の取締役または支配人その他の使用人でなかった者から選ばれます)でなければならないとして、監査の中立性を強化し、監査機能を高めています。
 監査役の職務が、小会社以外の会社では業務監査にもおよぶとされることから、監査役の監査は、取締役の職務執行についての適法性・違法性の監査にかぎられるのか、妥当性・不当性をも監査するのか、については学説上争いがあります。この問題については、取締役の職務執行が著しく不当なときは、取締役の忠実義務違反として違法となる、と考えられることから、どちらの立場に立っても、実際の結論はあまり違わないと言えます。
 小会社以外の会社においては、監査役は次のような権限を有しています。
 1. 取締役や支配人そのほかの使用人に対し、営業の報告を求めるなど、会社の業務や財産の状況を調査する権限。
 2. 取締役が、会社に著しい損害をおよぼすおそれのある事実を発見したときは、ただちにその報告を取締役から受ける権限(取締役の報告義務)。
 3. 子会社に対して営業の報告を求め、または子会社の業務や財産の状況を調査する権限。
 4. 取締役が株主総会に提出しようとする議案や書類を調査して、違法または著しく不当な事項があるときは、株主総会にその意見を報告する権限。
 5. 取締役会に出席して意見を述べる権限。
 6. 取締役が違法な行為をなし、またはそのおそれがある場合、必要があれば取締役会の招集を請求し、また一定の条件下に直接取締役会を招集する権限。
 7. 取締役の違法行為を差止める権限。
 8. 会社・取締役間の訴えにおいて会社を代表する権限。
 9. 株主総会決議取消訴訟などの各種の訴えを提起する権限。
 なお、平成5年の法改正で、大会社においては監査役会の制度が導入され、監査役会に一定の権限が付与されましたが、監査役会が組織されても、個々の監査役が上記監査権限を有することに変わりはありません。
 小会社、すなわち資本金額が1億円以下でかつ負債総額が200億円未満の会社、の監査役は、すでに述べたようにその権限が会計監査にかぎられているため、その具体的権限は次のようになります。
 まず、大・中会社の監査役が有する前記権限のうち、2.・5.・6.・7.・8.・9.の権限はありません。
 前記1.・3.・4.についても、会計に関する帳簿や書類の調査、意見報告の権限があるにとどまります。
 有限会社では、監査役は必要的機関ではなく、定款の定めで監査役が置かれた場合でもその職務は会計監査に限定されています。
 監査役は、取締役の業務執行を、大・中会社においては業務監査・会計監査の両面から監督・監査し、小会社においては、もっぱら会計監査の面から監督・監査する職務を有しています。

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