会社役員と社会保険の適用

 親会社の役員A氏を当社の非常勤の取締役に、同じく経理部長B氏を監査役に迎えようと思います。この場合、A氏とB氏を健康保険の被保険者としてよいのでしょうか。

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 健康保険の被保険者となるかどうかは、1.当該事業が健康保険の適用事業かどうか、2.その者が、適用事業所に「使用される者」かどうか、によって区別されます。本問の場合では1.は問題なく適用事業であると思われますので、非常勤の取締役や監査役が2.の「使用される者」にあたるかどうかが問題になります。結論的には、非常勤の取締役であっても現実に担当業務を持ち、これに対して報酬をうける場合には健康保険の披保険者となることができますが、たんに名目的・名誉職的な取締役であって、担当業務もなく労務の代償としての報酬も貰わない場合には披保険者とはなれません。また、非常勤の監査役は通常、健康保険の被保険者とはなれません。
 社会保険
 現在、我が国の社会保険としては1.医療保険、2.年金保険、3.損害補償保険、4.雇用保険の4つがあります(狭い意味で社会保険という場合には1.2.を指し、3.4.は労働保険と呼びます)。医療保険には、一般被用者の保険として健康保険があり、特殊被用者の保険として船員保険や国家公務員や地方公務員などの共済組合などがあり、地域保険として国民健康保険があります。一般の企業においては健康保険が適用されます。
 健康保険
 健康保険は、健康保険法13条に掲げられた事業の事業所に適用されます。そのうち、常時5人以上の従業員を使用している事業所はかならず健康保険に入らなければなりません。常時5人以上の従業員を使用している会社や工場・商店などはその大部分がこれに該当します。健康保険の保険者は政府および健康保険組合です。健康保険組合とは、被保険者数が一定数以上(500人以上の場合は設立は強制的、300人以上の場合は任意的)の規模になった場合に、事業主と被保険者らが厚生労働大臣の認可を受けて設立する法人です。
 健康保険の被保険者
 健康保険の被保険者となりうる者は、健康保険の適用事業の事業所に「使用される者」です。「使用される者」とは、事業主との間で継続的に使用従属関係にある者をいう、とされていますが、この関係は法律上の契約の名称や種類にかかわらず、契約の実質的内容によって判断されます。判断は、事業主との使用関係が明確かどうか、労務の代償(健康保険法では「対償」という言葉を用いています)である報酬をうけているか否か、事業主が人事管理をしているか否か、などを基準にしてなされることになります。法人の理事や取締役・代表取締役・無限責任社員などの法人の代表者も、労務の代償としての報酬を法人からうけているときは、法人に「使用される者」として健康保険の彼保険者になると解されていますし、保険実務上もそのように扱われています。したがって、株式会社の取締役でも、監査役でも、事業主たる会社のために現実に業務を担当して、その対価である報酬をうけていれば、健康保険の被保険者になります。
 常勤している取締役や監査役が、健康保険法でいう事業主に「使用される者」にあたり、被保険者資格を認められるのはほとんど問題がありませんが、非常勤の取締役や監査役は問題となります。
 非常勤の取締役でも、現に業務を担当し、その対償たる報酬をうけている場合は、先の判断基準に照らして、「使用される者」として被保険者資格は認められるでしょう。しかし、取締役の肩書が、本人の名誉のために与えられた名目的取締役などの場合は報酬もうけないことが多いものですが、このような取締役は、健康保険の被保険者とはなりえないと判断されます。
 また、非常勤の監査役については、その職務の実態は、会社との間で労務を提供してその代償をうけている関係とは異なると考えられ、先の判断基準に照らして、「使用される者」にはあたらないと言えます。現在の保険の実務でも、非常勤監査役は被保険者にならないと解しています。

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