監査役とは
社長から「監査役を引き受けてもらえないか」と打診されました。監査役は取締役の職務執行を監査するそうですが、会社の中でどのような地位にあり、どのような役割があるのでしょうか。
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監査役は、株式会社においては、株主総会・取締役会・代表取締役とならぶ必要的機関であり、会社の業務執行を監査する役割を持っています。
株式会社には、かならず置かなければならない機関として、1.会社の基本的意思決定を行う株主総会、2.会社の業務執行の意思決定を行う取締役会、3.会社の業務執行を現実に行う代表取締役、4.会社の業務執行を監査する監査役、の4つがあります。国家の統治のための機構を立法・司法・行政の三権に分けて、それぞれの間で抑制と均衡を図ることにより、権力の暴走を防止しようとする三権分立制度は、我が国をはじめ多くの近代国家が採用する制度ですが、この三権分立割にたとえれば、株主総会が立法府すなわち国会、取締役会と代表取締役が行政府すなわち内閣、監査役は司法府すなわち裁判所、ということになります。
監査役は株主総会によって選任される、株式会社の必要的機関です(有限会社においては、定款の規定により置くことも置かないこともできる任意的機関とされています)。現在監査役である者は、株主総会において監査役の選任について意見を述べることができます。
監査役と会社との関係は、取締役と同様委任関係であり、定款または株主総会の決議によって決定された報酬を受けます。監査役の員数は、株式会社の必要的機関ですから最低1人以上ということになりますが、資本の額が5億円以上または負債の合計金額が200億円以上のいわゆる大会社においては、監査役は3人以上で、そのうち少なくとも1人は常勤でなければならず、また、いわゆる社外監査役(就任の前5年間、その会社またはその子会社の取締役または支配人その他の使用人でなかった者)を最低1人は置かなければならないとされています。
監査役は、監査の公正を期すため、会社または子会社の取締役または支配人そのほかの使用人と兼職することはできません。また、いわゆる大会社においては、監査役の監査のほかに、会計監査人の監査をうけることが必要です。
監査役の職務は、抽象的にいえば会社の業務執行の監査・監督ということになりますが、その監督の内容や権限は、昭和49年および昭和56年の商法改正で会社の規模によって大きく異なるようになりました。
(1)資本の額が1億円をこえる株式会社または負債の合計金額が200億円以上の株式会社の監査役は、商法に規定された以下のような職務・権限を有し、取締役の業務執行に関する監査と会計監査の両方を行うべきものとされています。すなわち、この規模の会社の監査役は、
1. いつでも取締役や使用人に対し、営業の報告を求めまたは会社の業務および財産の調査をすることができます。親会社の監査役は、職務を行うに必要なときは子会社に営業の報告を求めることもできます。
2. 取締役会に出席して意見を述べることができ、一定の場合には取締役会の招集を請求する権限もあります。
3. 取締役が株主総会に提出しようとする書類などを調査し、法令・定款に反する事項や著しく不当な事項については株主総会にその意見を報告する権利と義務があります。
4. 取締役の違法行為の差止請求権があります。
5. 株主総会決議取消の訴・新株発行無効の訴などの各種の訴訟を提起する権限、会社整理や特別清算などの申立権限があります。
なお、監査役が行う業務監査は、取締役の職務執行全般にわたるのですが、適法性・違法性の監査にかぎるのか、妥当性の監査にもおよぶのかについては学説上争いがあります。この点については取締役の「著しく不当」な行為は忠実義務違反として違法になると考えれば、どちらの考えにたっても、実際の結論にはほとんど差異はないと言えます。
(2)資本の額が1億円以下で、かつ負債の額が200億円未満の株式会社については、監査役は、会計監査のみの職務と権限を有し、業務監査権限はありません。すなわち、商法に規定された、上の1.から5.に述べたような権限は、会計に関する帳簿や書類の調査、意見報告の権限および会計監査に必要な子会社調査権が認められていることを除けば、与えられていません。
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