常勤役員と非常勤役員の区別
当社には、「常勤役員」と「非常勤役員」がいますが、どのような違いがあり、また、どのようにして決められるのでしょうか。
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「常勤役員」「非常勤役員」という言葉は実務上よく使われてはいますが、法令上、定義や明確な根拠があるわけではありません。通常、会社の業務が行われている日は毎日出勤する役員を常勤役員、必要に応じて出勤する役員を非常勤役員と呼んでいます。またどの役員を非常勤とするかについては、普通取締役会で決めますが、大会社の常勤監査役は、監査役の互選により決めます。
いろいろな会社において、「常勤役員」とか「非常勤役員」という名称が使われる例がよくありますが、実は、これは明確な法令上の根拠がある名称ではありません。監査役については、法律上「常勤監査会」という言葉が出て来ますが、これについても、「常勤」の意味、非常勤との区別の基準は必ずしもはっきりしてはいません。
一般的には、「常勤」と「非常勤」の区別は、会社の業務が行われている日は毎日出勤する義務を負っている役員を「常勤役員」と呼び、会社から出勤を要請された時や、職務遂行上、必要な時にだけ出勤する義務を負っている役員を「非常勤役員」と呼んでいます。
実務的には、非常勤役員は、会社の従業員としての地位を兼ねず、他の会社の取締役や監査役を兼ねていたり、他に職業を持っている場合が多いようです。このような人材を非常勤役員とするのは、会社の社会的信用を高めたり、他の分野で培った経営上のノウハウや能力・経験を会社経営上活かしたりするのに役立つからです。
「常勤」「非常勤」の区別の基準についての学説は、直接的には、法律上「常勤」という言葉が存在する監査役に関して大きく分けて2つの考えが展開されていますが、その考え方は、取締役についても当てはまります。
第一の考え方は、常勤役員とは、会社の業務が行われている間、役員の業務に専念する義務を負う者をいい、非常勤役員とはそれ以外の役員である、とする見解です。
第二の考え方は、継続かつ一貫した(役員としての)職務を遂行するのに必要な時間を職務に割当てられる勤務状態にある者を常勤役員という、とする見解です。
第一の考え方では、常勤役員は毎日、一般の従業員と同一程度の時間勤務すべきことになり、他社の常勤役員になることはできないことになります。これに対し、第二の考え方では、常勤役員でも、必ずしも一般の従業員と同程度の時間勤務するということは必要ではなく、また、会社の規模や業務形態が違えば複数の会社の常勤役員を兼ねることも許される、ということになります。
第二の考え方に対しては、非常勤役員であっても、継続かつ一貫した(役員としての)職務を遂行するのに必要な時間を職務に割当てるべきことは、当然要求されることであり、このことは、両者の区別の基準にはならない、という批判があります。
常勤役員も非常勤役員も、勤務時間のあり方に違いがあるだけであり、取締役または監査役といった役員であることに変わりありません。したがって、その権限・義務は、常勤か非常勤かで法律上違いはありません。会社に対する責任や第三者に対する責任等についても、常勤・非常勤による違いはありません。
常勤役員・非常勤役員の区別は、たんに勤務時間のあり方が違うだけで、それ以外は役員として全く同一ですから、その選任は株主総会でなされます。そして、役員としての職務上、常勤が原則と考えられますから、役員中とくに非常勤役員を決める必要がある場合に、取締役会において、「非常勤」とする者を決めることになります。
ただ、いわゆる大会社(資本金の額が5億円以上または負債の合計額が200億円以上の株式会社)の監査役については、取締役会ではなく、監査役の互選をもって、常勤の監査役を定めなければならない、とされています。大会社以外の中会社・小会社でも、複数の監査役を置き、内部規則で「監査役の互選により常勤・非常勤の監査役を決める」とすることも可能です。
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